昨日の撮影で、音声収録に失敗した2カ所のアフレコ。ユリアもバレリアもアフレコなんて初めてだけれど、すぐにその意味を理解して、サクサク進めていきます。言い回しを2人で話しあって、すこしでもいいものにしていこうとする。その飽くなき創造力に圧倒されます。
そのあとは、撮り残したシーン1とシーン8。
特にシーン8は、友人の死を知るというとても大切なシーンになります。ユリアはそのテイクの前に窓際に行き、何かを思い浮かべて本物の涙をまとって撮影に臨みます。昔から演劇をやってきたわけでもなく、演技を勉強してきたわけでもなく…。
その感情表現の豊かさにはただただ驚くばかりです。紛争に巻き込まれ、故郷オデーサを離れて異国に暮らす困難さが、その演技力を引き出しているのだと思います。
「トラウマを語り始めると、もっともっと伝えたくなる」
ユリアはいつもそう言います。
今回は完全にイメージ先行のものと、モノローグの付いたセミドキュメントの2作品を制作していますが、どちらも粗編集を見ただけでみんな泣いていました。
「傷ついた心だけれど、それだって自分の心」
ユリアの本物の演技を見て、撮影する側もその言葉を受け止めました。
たった2日間だけど、納得のいく映画になったと思います。
それにしてもユリアもゴースト役のヴァレリアも、ものすごいアップに耐えうるその美しさにも驚かされます。
桑山 紀彦
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