Project熊本地震復興支援プロジェクト

本プロジェクトが
始まったストーリー

2016年4月14日、16日に発生した熊本、大分での大地震。
余震が続き、避難を余儀なくされる方が多数出る中、4月20日より支援活動を始めることを決めました。東日本大震災で私たちが被災したとき、最初に駆けつけてくれたのは福岡のドクターでした。その後、熊本のドクターも応援に駆けつけてくれ、震災直後の大変な時期を乗り切ることができました。見て見ぬふりはできない、少しでも九州の人たちの役に立てれば、そんな思いで出かけて行きました。
先に熊本入りしていた友人より、阿蘇大橋が崩落し、至るところで道路が寸断された南阿蘇村にはなかなか支援の手が届いていないと聞き、南阿蘇村をめざしました。
そこからは医療チームの一員として、5月5日までスタッフが常駐し、主に心のケアに重点をおいて活動を行いました。医療的な相談、子どもたちの経験を形にして吐き出し共有すること、心のケアセミナー、様々な活動を通して、辛い体験に向き合い乗り越えていくことをめざしました。

医療支援

震災直後ということもあり、まずは医療支援を開始。各地の医師会、赤十字の病院スタッフも多く、私たちは主に心のケアを担当することになりました。 避難所になっていた南阿蘇中学校の体育館の入り口に心療内科仮設診療所「こころの相談室」という小部屋を設置。医師、看護師が待機し、震災によって引き起こされた恐怖感や不眠、先の見えない避難生活への不安などをていねいに聞き取り、症状の改善に努めました。今回の熊本での地震は大きな余震が長く続き、緊張が解けない日々でした。自宅に残ったまま不自由な生活をしている方も多く、保健師さんなどを経由して情報が入るとご自宅や他の避難所への往診にも出かけました。
南阿蘇村に滞在していた16日間で、31名の方が診療を受けられました。中には何度か受診を希望される方もおり、抱えている不安やストレスの大きさを感じる毎日でした。
また、全国各地から応援の心療内科医や臨床心理士が駆けつけてくれたおかげで、16日間、途切れることなく診療を行うことができました。

心のケアセミナー

震災によって引き起こされた恐怖感や不眠、長期化する避難所生活などのストレスは、うつ病や不安障害などの精神疾患の発症、PTSDを始めとする健康問題につながることがあります。これらの症状に陥ることを未然に予防する1つの手法として、「心のケア」について学ぶ場を設けました。代表の桑山は心のケア(心理社会的支援)の専門家で、東日本大震災後も名取市の子どもたちと活動を行い、いろいろな知見を得ていたので、それを伝授していきました。
主に子どもたちに接する学校の先生、保育士、保護者の方などにセミナー参加を呼びかけました。避難者の対応に追われ、子どもたちを守ろうと必死にがんばってきた先生たち、不安の中、一緒に時間を過ごしていたお父さんお母さん、セミナーの中で少しずつ肩の荷を下ろされ、涙される姿も見受けられました。辛かったこと、不安なことを心の中に閉じ込めるのではなく、語りながら共有し、前に進むステップにしていくこと。その後も多くの場で実施してくださったようです。
最終的に南阿蘇村のほぼすべての教育期間でセミナーを実施しました。常駐期間の後もセミナーの評判を聞き、自分たちも勉強したいという前向きな声が聞かれ、何度か出かけて行きました。とても熱心なみなさまで、子どもたちを取り巻く環境の温かさに心を打たれました。

子ども会議と心のケアワークショップ

避難所には多くの子どもたちがいました。日中、大人は家の片づけに行ったり、仕事に出かけたりしますが、学校が休校になってしまった子どもたちは、避難所で手持ち無沙汰に過ごしていました。そこで、小学生に声をかけ、「子ども会議」や心のケアワークショップに取り組みました。
自己紹介などをして話しやすい雰囲気を作った後、まずは避難所の問題を考えてみました。トイレのこと、支援物資の分け方、余震、いろいろな意見が出てきます。みんなでどうしたら居心地のいい避難所になるのか、考えていきました。余震に備えた対策も意見が飛び交います。
別の日には子どもたちの現在の状況を尋ねてみました。家に住めない子が5人、片づければ住める子が13人、もう家に戻っている子が3人。まだまだ大変です。それでも子どもたちは少しずつ地震の日のことを話し始めてくれました。とても怖かった揺れのこと、車に乗って急いで避難したこと、家に戻れないと聞いて不安に思っていること。みんなで友達の話に耳を傾け、思いを分かち合っていきました。
心のケアのワークショップでは、絵を書いたり粘土で形を作ったり、言葉だけに頼らない表現手法を多用します。南阿蘇の子どもたちとも様々な表現活動に取り組んでみました。
「大好きな故郷」の絵には、阿蘇山、白水水源、白川、美しい南阿蘇の自然が次々と出てきます。みんな南阿蘇村が大好きです。「故郷の元の姿を取り戻したい」と絵を見ながら話す子どもたち。復興を支える大きな力になることでしょう。
このようなワークショップを毎日開催し、子どもたちと接してきました。厳しい現状をしっかりと受け止め、それでも夢や希望を語る子どもたち。そんな未来を担う子どもたちが、周りに集う大人たちを勇気づける大きな力になるだろうと感じました。

活動を終えて…

2016年4月14日、静岡県御殿場市で地球のステージ公演を終えて帰ろうとしたとき、熊本での地震の一報を耳にしました。神奈川に居を移した直後で、翌週には東ティモールに活動に出かける予定が決まっていて、すぐには駆けつけられない。どうか大きな被害にならないでくれ、そう願いながら家路につきました。
被害状況があきらかになるにつれ、頭の片隅には東日本大震災のとき、九州からもたくさんの方が応援に駆けつけてくれたり思いを寄せてくれたりしたことが次々と思い出されました。そして、先に出かけていた友人から「南阿蘇村にアクセスできそうだ」と連絡が入りました。行かなかったら後悔する、そう思い、東ティモール渡航の予定を延期して、熊本に出かけました。
南阿蘇中学校の体育館に足を踏み入れた時、6年前の東日本大震災の東北の記憶が蘇りました。現地の医師会の先生や支援に来ていた他の医療スタッフと相談し、心療内科の診療を任されることになりました。途中、桑山自身は東ティモールでの仕事のため熊本を離れましたが、多くの方の協力により、医療支援活動と子どもたちへの心のケアワークショップを継続することができました。常駐期間後もセミナー等のため南阿蘇村を訪れ、街や人々が少しずつ復興していく様子を見てきました。故郷を愛する熊本の人たち。その熱い思いできっと復興が成し遂げられていく。そう感じています。

2017年夏
地球のステージ代表理事/心療内科医 桑山紀彦

人と関わり、人を支える
支援活動の実施にご協力ください。

みなさまからの寄付や物資支援、協働といった応援によって、
現地の人の未来を長期にわたってより良くする海外支援を
より多くの人に届けることができます。