1999年の独立に際した争乱直後より、地球のステージが医療支援を続けている東ティモール。2008年、2014年、2021年と段階的に地域ニーズに合わせて取り組みを変えつつアプローチしてきました。本プロジェクトでは、出生率が高く妊娠・出産を取り巻く環境に多くの課題を抱える東ティモールにおいてニーズの高い、母子保健分野での支援をおこなっています。
本プロジェクトが
始まったストーリー
1999年の争乱直後から、ディリ市内にあるバイロピテ診療所の支援活動を行ってきました。院長であるダン医師の補佐や、不在時の代診を担当すべくこれまで活動してきました。
2008年からはバイロピテで働いていたアイダ医師を現地の代表に迎え、主にバイロピテ病院の診療の補助と、山間地における巡回診療を展開してきました。
2014年からはJICA東北の草の根技術協力事業の委託を受け、ハトリア郡の山間地で妊産婦保健事業を展開してきました。SISCa(包括的地域保健サービス)を基本としている東ティモールにおいて、その活動が円滑にいくためのPSF(保健ボランティア)の育成に尽力し、多くのPSFが育ちました。加えて助産師の育成にも力を入れました。
2017年からは外務省のNGO連携無償資金を活用し、ハトリア郡のさらなる山間地における保健の向上事業を継続してきました。
保健ボランティアの活躍により、住民の保健知識の向上が見られた一方で、医療提供体制には課題が残りました。
この課題に対して、2021年からは、引き続き外務省のNGO連携無償資金を活用し、現地でニーズの高い母子保健に焦点を当てた女性の医療アクセス向上事業に取り組んでいます。活動地をエルメラ県全土に広げ、これまで育成してきたPSF活動をベースとして、医療者への能力強化・病棟建設など医療提供側において支援が不足していた部分についての強化を目指します。
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ディリ市内の
バイロピテ診療所支援1999年〜
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妊産婦・新生児死亡率
削減プロジェクト2008年〜
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保健ボランティア育成を
通した地域保健事業2014年〜
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母子保健に特化した
医療サービスへの
アクセス改善2021年〜
本プロジェクトの内容
女性の妊娠前から出産後までの母子継続ケアを強化するべく、母子保健リプロダクティブヘルスサービスへのアクセス改善を目的とした活動をしています。
引き続き現地で活動している保健ボランティアの協力を受け、医療を受ける側の意識に働きかけると同時に、医療を提供する側の質を向上させ、住民、特に女性が自分の意思で医療にアクセスできるようになることを目指しています。
母親エンパワーメント
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母親学級
医療者による母親学級は初めての試み。ガイドラインや教材の作成、医療者研修、計画・実施というプロセスを通し、現地での体制作りをサポート。 -
啓発キャンペーン
女性が自分の意思で物事を決定できないという文化がある中、男性を含めた住民全体に、母子の健康や妊娠・出産において医療受診が必要であることを啓発し、女性の決定権の向上を目指す。
医療者の育成
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超音波検査研修の立ち上げ
医療アクセス向上のためには医療の質向上が必須。妊産婦検診において質の高いサービスを提供するため、国として初となる超音波検査(エコー検査)の導入について現地保健省・教育機関と協議し、共同で研修ガイドライン・教材を作成。
本ガイドラインはナショナル・ガイドラインとして策定された。 -
医療者への超音波検査指導
策定したガイドライン・教材に沿って、現地医療者へ超音波検査研修を実施。東ティモールにおけるエコー実践者を育成している。
妊婦や胎児への侵襲なく赤ちゃんの発育等が分かるエコー検査の波及・拡大により、医療の質向上を目指す。 -
助産師育成支援
地方の村における医療者不足を解消するため、団体スタッフとして共に活動してきた住民助産師のマルティーニャが国の正式な資格を取得するための学資支援を実施。
システムづくり
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産婦人科病棟の建設
母子保健サービスへのアクセスができる拠点としての専門病棟を建設し、医療者による介助のもと出産する場、また、産後ケアや家族計画相談を受ける場を設置。 -
母子手帳の活用強化
母子手帳をより効果的に活用し、途中でドロップアウトすることなく妊娠中・出産・産後ケアに至るまでの母子保健医療を継続的に受けられるツールを開発。
プロジェクト概要
対象地 | 東ティモール エルメラ県 |
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対象者 | 東ティモール人医師、助産師、妊産婦、保健ボランティア、コミュニティ等 約20,000人 |
対象期間 | 2021年2月~ |
現地連携団体 | 東ティモール保健省、東ティモール国立保健教育機関、エルメラ県保健局 |
資金 | 外務省|NGO連携無償資金協力 |