閖上の記憶

 東日本大震災の被害が大きかった名取市閖上にあった閖上中学校。震災で14名の生徒さんが亡くなりました。遺族会のみなさんと話し合い、東日本大震災から1年が経った2012年3月11日、旧閖上中学校に慰霊碑を設置しました。たくさんの方の手に触れて、石に掘られた子どもたちの名前の角が消えるくらいに触れていただいて、あたたかい慰霊碑であってほしいと願いを込めて、手で触れやすい形の慰霊碑を作りました。
 その慰霊碑を見守る社務所として、2012年4月22日、旧閖上中学校の入り口に「閖上の記憶」は誕生しました。多くの方が慰霊碑に備えてくださるお花の管理をしながら、日々、慰霊碑を見守り、子どもたちの側に寄り添い続けています。

 その後、被災された方が自分の体験に向き合い、語り伝える場所として「語り部の会」が始まりました。初めての語り部は閖上中学校遺族会会長の丹野祐子さん。今ではご自身の体験だけでなく、これから起きるかもしれない災害や震災に対しての防災のお話も取り入れています。現在ではほぼ定期的に、日曜日の午後に「語り部の会」を開催。閖上や周辺の沿岸部で被災された方が交代で語り部としてお話しています。
 「閖上の記憶」には震災当時の映像や写真、資料なども多く展示され、常駐スタッフによる解説を行っています。また、震災後に名取市内で被災した子どもたちと取り組んだ心のケアの活動で制作したジオラマも展示しています。自分たちが生まれ育った街の姿を再現し、震災当日にそれぞれが目にしたものを形にし、これから住みたい未来の街を作り上げました。実物大ではなく子どもたちの心の中にあるがままに再現された街には、たくさんの思い出が詰まっています。そして、未来の街は災害に負けないよう防災意識と夢を織り交ぜて作りました。みんなが大好きな閖上の街。そんな人々の思いも感じていただけるかと思います。

 そして圧巻は大画面に写し出されるビデオ「記憶の足跡」です。これには短い10分版から長い39分版まであり、訪問される皆さまのご予定に会わせて上映しております。
 そしてその横には「証言ブース」があります。そこでは実際に被災された皆さんの証言をビデオと共に聴くことができます。
 また、閖上を訪れるみなさまに、震災前の街の様子や人々の暮らし、震災当時のことなどをお話しする「案内ガイド」(有料)も行っています。2014年秋以降、閖上地区のかさ上げ工事が本格的に始まり、ガイドをしながらバスで回ったり、バスから降りて見学できる場所が少なくなりました。2015年度からは「語り部講話」として、閖上の記憶の中で震災を伝えるプログラムも始めました。2017年以降もある素材を使い、気持ちを込めてこの「伝えていく」ための活動を継続しています。
 かつて閖上には6000名を超える方が暮らしていましたが、津波により多くの家屋が流失し、今では更地が広がり、震災前の街の面影を留めるものはほとんど何もありません。閖上に暮らしていた方とともに街を回ること、話を聞くことで、確かに人々の営みがそこにあったことが実感できます。また、震災で人々はどのように行動したのか、復興へ向けての思いなどを共有できる場にもなっています。案内ガイド、語り部講話ともに事前申込みが必要となりますが、多くの方が閖上にお越しくださることを願っています。

閖上の記憶のホームページはこちら(https://tsunami-memorial.org/

2017年6月14日
地球のステージ