2021年2月より、外務省のNGO連携無償資金協力を受け、引き続きエルメラ県を対象に活動しています。
これまでの活動で育成してきた保健ボランティアの活躍により、住民の保健知識の向上が見られた一方で、医療提供体制には課題が残りました。特に妊婦健診の継続受診や医療者介助による出産のような、母親が医療サービスを継続的に利用する体制は未だ整っていません。また、提供する医療サービスの質が低いために、健診を受けてもハイリスクや異常を発見できず、防げるはずの出産関連死が防げずにいる状況です。
そこで、女性の妊娠前から出産後までの母子継続ケアを強化するべく、母子保健リプロダクティブヘルスサービスへのアクセス改善を目的とした活動を開始しました。
引き続き現地で活動している保健ボランティアの協力を受け、医療を受ける側の意識に働きかけると同時に、医療を提供する側の質を向上させ、住民、特に女性が自分の意思で医療にアクセスできるようになればと願います。
母子保健に特化した医療サービスへのアクセス改善
医療を受ける側への働きかけ
母親のエンパワーメント
母親学級の実施
東ティモールでは、母親ボランティアなどが提供する母親学級はありましたが、医療者による母親学級は初めての試みになります。日本の例を参考に、ガイドラインや教材の作成、医療者への研修、計画、実施というプロセスを通し、現地での体制作りをサポートします。
啓発キャンペーン
女性が自分の意思で物事を決定できないという文化がある中、男性を含めた住民全体に、母子の健康や女性の決定権の向上について啓発していきます。女性が、医療を受けることを自分の意思で決めて良いという考えを浸透させることを目的としています。
医療を提供する側への働きかけ
医療者の育成
医療者への超音波検査指導
日本では当たり前の超音波検査(エコー検査)ですが、東ティモールでは海外で研修を終えた一部の医師・技師のみしか行っていません。
しかし超音波検査は、特に産婦人科分野では赤ちゃんの発育、位置、出産予定日、リスク、異常などを見て確認できる上、妊婦や胎児への侵襲もない、大変効果的な検査です。
医療アクセス向上のためには医療の質の向上が重要であるため、本事業では現地保健省や教育機関と協働でガイドライン・教材の作成、研修、実地研修を実施し、東ティモールでの超音波検査の立ち上げに取り組んでいます。研修修了後は妊婦検診で超音波検査の実施を開始し、これまでの方法では発見できなかったハイリスク患者を特定できるようになってきています。検診の質が向上することにより、多くの女性が安全な出産を迎えられるようになればと願います。
システム作り
産婦人科病棟の建設
母子保健サービスへのアクセスができる拠点としての専門病棟を建設し、医療者による介助のもと出産する場、また、産後ケアや家族計画相談を受ける場を設けました。
母子手帳の活用強化
東ティモールでは母子手帳は導入されているものの、うまく活用されていないケースがほとんどです。そこで他国の例を参考にしながら、母子手帳をより効果的に活用し、途中でドロップアウトすることなく妊娠中・出産・産後ケアに至るまでの母子保健医療を継続的に受けられるツールを開発し、現在一部地域にてパイロット運用をしています。
本事業では、高度な専門知識を必要とする内容が多く含まれるため、たくさんの専門家の方にご協力いただいています。心より感謝申し上げます。
助産師育成支援
東ティモールでは、家族や伝統的産婆の介助を受けての自宅出産が多く、緊急時に適切な処置ができないために命を落とすケースが多々あります。特に地方の村では医療技術者が不足しており、出産時に適切な医療を受けられないのが実情です。
この現状を改善するために、これまで当団体では、出産介助ができる住民助産師を育成してきました。しかし国の方針が変わり、正式な資格保持者のみ出産介助をすることが求められるようになりました。そこで2019年より、正式な助産師を育成するべく学資支援を始めました。
これまで団体スタッフとして共に活動してきた住民助産師のマルティーニャが、現在、助産師学校に通っています。卒業後は地元マヌサエ村の助産師として働き、たくさんの母親と赤ちゃんを救いたいと、日々勉学に励んでいます。