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伝統的なお産〜Tur Ahi(トゥル アヒ)火の出産〜

第3回目は、ハトリア郡での伝統的なお産〜Tur Ahi(トゥルアヒ)火の出産〜をご紹介します。

 

②このお宅もTur Ahi

 

お産の場所は?
①ベッドの横で火を焚いていた後

薪をくべた横のベッドでお産

東ティモールの女性たちの多くは、家で出産します。

 

自宅出産する理由は、

・病院が遠い

・病院へ行くための交通手段がない

・病院でお産するのが恥ずかしい

・医師が男性のため、夫から病院での出産の許可が得られない

・先祖代々家で出産している伝統がある・・・

など、様々な理由があります。

 

 

 

 

 

 

 

お産時は火をたく? 
③ベッド横で火をたくとこんなに煙が

屋内には煙りが充満し、鶏も進入

伝統的なお産は、台所から一番近いベッド上で行われます。ベッドの横では火が焚かれ、出産後も数日間続けられます。火を焚く理由として「身体を冷やすとお産が遅くなる」と先祖代々言い伝えられている事が多いようですが、他にスピリチュアルな意味合いがあったのではないかとも考えています。また、インドネシアでは、出産時に穴が空いた椅子に座り、その穴の下では火が炊かれ、陰部を温める事で会陰をリラックスさせ、皮膚の伸展を良くする風習があります。東ティモールは、インドネシアに占領されていた時代もあり、そういったインドネシアの風習の名残りもあるかもしれません。

 

日本でも陣痛緩和の為に、腰を温めたり、足浴をしますが、熱帯地域である東ティモールで、しかも日中に火を炊かれた時は、熱すぎるのに加え、煙が目に染み大変な思いをしました。もちろん、山岳部の寒い地域では良い配慮だと思うのですが、煙による影響を考えるとベビーとママに望ましいとは言えず、難しい問題です。

 

 

お産は夫がとるのが当たり前?

出産は、東ティモール保健省としては医療者立ち会いを勧めていますが、約13万いる人口に対して助産師が3名しか配置されていないハトリア郡(2015年現在)では難しい現状があります。そのため、夫や実母が出産を手伝う事がほとんどで、これらが妊産婦、乳幼児死亡を高めてしまっている原因の一つでもあります。

 

 

陣痛中の過ごし方—陣痛が弱くなると・・・?

陣痛中は、火を炊く事以外に、赤ちゃんの頭が出てくるまでは、散歩や横になったり、軽食をとったり・・・と日本と過ごし方に大差はありません。

 

しかし、陣痛が弱くなると現地の助産師達はおへそ周りを軽く摘み上げるようなマッサージをリズムかるにするのが日本の助産師の処置との違いでしょうか・・・。おへそ周囲を軽く摘み上げるようなマッサージをリズミカルにする事で陣痛が促進されるそうです(残念ながら、今の所エビデンスはありません。)。これは、インドネシアの助産師もよく実施しており、元はインドネシアに存在するドゥクンバイ(伝統的なお祈りを使う産婆)がお祈りで使用する行為の一つです。現在いる東ティモールの助産師は、インドネシア占領時代の教育を受けた方が大半を占め、今も国に1つしかない助産学科の教育は、インドネシアのカリキュラムや内容を参考にしている事もあり、インドネシアの伝統的な風習も知らず知らずに引き継いでしまっているのでしょう・・・。

 

なお、日本では陣痛が弱くなった場合、乳首をマッサージします。乳首をマッサージする事で、陣痛が促進されるオキシトシンというホルモンが分泌されるからです。

 

 

さあ、産まれるよ! 
④夜中のお産(暗いです・・・)

夜中の暗闇の中でのお産

「赤ちゃんの頭がもう出てくるよ〜」となった場合は、ベッドに仰向けの状態になります。洋服は長い巻きスカートを履き、お尻の下に沢山の布を敷き、羊水や胎盤を出した後の出血に備えます。鶏の声や、牛の鳴き声に混ざり、妊婦さんが頑張る声、赤ちゃんの「おぎゃー!」という第一声を聞くと、人間の本来の自然の力に勇気をもらうと共に、動物としての人間の姿に神秘を感じられずにはいられません。

 

しかし、夜中の出産の場合、月明かりとロウソクで介助しないといけないときは、神秘を感じるどころの余裕はありません。よく見えない環境で、緊急時の対応など考えると恐怖で足がすくむ私ですが、7人〜10人の子どもを自らの手で受け取ってきた東ティモールの男達(夫)を思うと、敬服せずにはいられません。本当に凄いです。

 

 

産後は軟禁状態? 
⑤産後、新生児健診(外に出られないので家の中で予防接種)

赤ちゃん訪問で予防接種

 

さて、出産直後はどうしているかというと、熱湯に布を浸して、身体を拭いてもらい、鶏肉のおかゆを食べ栄養をつけます。寒い山岳地域でも、滅多な事がない限りお湯浴びをしないので、特別な行いといえるでしょう。

 

また、ママとベビーは、産後40日間は出産した部屋で過ごした後、やっと別の部屋及び外出ができるきまりになっています。

 

日本でも産後1ヶ月間は、ベビーの免疫力も十分でないため、積極的な外出は控えるように指導していますが、東ティモールでも理由は日本と同じようです。家族、親戚、犬や鶏などの出入りが多いので、一定の部屋で過ごして風邪や変な菌をもらわないような配慮をしているのだそうです。

 

 

 

家族の力 

村へ産後の健診に行くと、小さな子ども達までも産後のママのために、水を汲んだり、薪をくべる手伝いをする姿をよく目にします。

 

夫や実母、家族の力をかりて、火やお湯を湧かすための薪を集め、お産を介助し、鶏を準備し、世代を越えて助け合う(助け合わざるをえない・・)文化が当たり前のようにあるからこそ、家族の受け入れがスムーズなのかと感じられずにはいられません。

 

日本の医療者は、夫や家族、きょうだい達が新たな命の誕生を肯定的に受け入れ、スムーズに家族として迎え、愛情を注げるように、あの手この手を使いサポートを考えます。核家族化、共働きが多い中、サポートを得ながら子育てする難しさがある日本と比較すると、親戚の親戚の親戚・・・まで家族として、妊婦や赤ちゃんをサポートしてくれる文化は愛すべきものだと感じます。

 

⑥警備員ジョアオさん一家のコピー

警備員ジョアオ一家とスタッフ

後列左から2人目がジョアオ。7人のお子さんのうち、2人

を取り上げました。後列左はドライバーマリヌ、右は菊地

 

(東ティモール駐在員 菊地陽)

 

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